| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-251  (Poster presentation)

岡山県におけるサクラソウ Primula sieboldii の現状
Current status of Primula sieboldii in Okayama Prefecture

*片岡博行(重井薬用植物園), 渡邉清恵(岡山県自然環境課)
*Hiroyuki KATAOKA(Shigei Herb Garden), Kiyoe WATANABE(Okayama Prefectural Office)

サクラソウ Primula sieboldii は、サクラソウ科の多年草で、個体により長花柱花または短花柱花を咲かせ(異型花柱性)、異なるタイプの個体間の受粉では種子ができない性質を持つ。環境省RL2020では準絶滅危惧、岡山県版RDB2020では絶滅危惧Ⅰ類とされているほか、2009年には「岡山県希少野生動植物保護条例」により希少野生動植物に指定されている。

条例指定後10年以上が経過したことから、指定効果を検証し、今後の施策に資することを目的として2022年5月に、指定検討時(2004~2007 年)に調査された13 地点および指定後に新たに生育情報がもたらされた3 地点の計16 地点についてモニタリング調査を実施した。

調査の結果、条例指定に至る大きな理由であった盗掘・乱獲については、今回はほぼ確認されなかったが、過去と比較して個体数、開花数が増加し、花タイプについても偏りが見られなかった個体群は、火入れや夏期の草刈りなど積極的な保全活動が実施されている1 地点のみであった。保全を目的とした草刈り管理のみが実施されている場合は、比較的良好な生育環境が保たれていたが、開花個体数は減少していた。また、保全目的ではないが定期的な草刈りなど何らかの人為的管理が行なわれている場合は、個体数は概ね過去と同程度であったが、いずれかの花タイプが消滅するなど、多様性は損なわれつつあった。人為的管理がまったく行われていない地点の多くでは生育が確認できないなど、個体群の存続が危うい状況となっていた。

条例指定により盗掘・乱獲については減少したが、多くの地点で生育状況は悪化していた。将来にわたってサクラソウの個体群を維持していくためには、保全を意図した積極的な人為的管理を行うこと、人為的管理の実施・継続が難しい個体群については、計画的に域外保全を進めるなどの新たな対策が必要と考えられた。


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