| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-252  (Poster presentation)

アブラゼミの初鳴きに影響する気象変数の探索と気候変動影響の検出
Exploring the effective weather parameters on the first singing date of Graptopsaltria nigrofuscata and detecting the impact of climate

*辻本翔平(国立環境研究所), 小出大(国立環境研究所), 熊谷直喜(国立環境研究所), 池上真木彦(国環研/琵琶湖分室), 西廣淳(国立環境研究所)
*SHOHEI TSUJIMOTO(NIES), Dai KOIDE(NIES), Naoki KUMAGAI(NIES), Makihiko IKEGAMI(NIES Lake Biwa Branch Office), Jun NISHIHIRO(NIES)

近年の気候変動によって様々な生物の出現時期に変化が生じているが、その変化の度合いや方向性は生物の種によって異なる。特に個体数の多い種の出現時期が変化すると、関連するほかの種との間でフェノロジカルミスマッチが生じ、多くの種の適応度や生物間相互作用に影響する事が指摘されている。例えばアブラゼミは夏期に大量の成虫が地上に出現するため、餌生物あるいは植食者として生態学的に重要である。そのため、気候変動によるアブラゼミの出現パターンの変化を知ることは、関係する他の種への影響を予測する上で有用な知見となる。しかし、アブラゼミの数年間に渡る地下での幼虫期の生態はよくわかっておらず、その出現パターンに影響する気象要因も十分に解明されていない。そこで本研究では気象庁により全国を対象に観測されてきたアブラゼミの初鳴日の記録を使用し、その出現パターンに影響する気象要因について解析を行った。
全国47の地方気象台において観測されてきた、1971年以降のアブラゼミの初鳴記録と1969年以降の気温、湿度、日射量、降水量、風速の日毎の観測データを用いて、初鳴日に影響する要因を探索的に解析した。その後、最も説明力のある気象要因を共変量として用いて状態空間モデルを作成し、アブラゼミの初鳴日が気候変動に伴う気象要因の時系列変化から影響を受けている可能性を検討した。
探索的な解析の結果、初鳴日は322日前から221日前の(盛夏から初冬)の気温と強い負の相関を持つことが明らかとなった。続いて状態空間モデルによる解析では、この期間の気温が年々上昇していることが、初鳴日の早期化に影響していると示唆された。すなわち、気温は地温の高さを反映しているため、前年の夏-冬の間の地温の高さがアブラゼミ幼虫の成長を促進させ、出現時期の早期化につながったと推察される。


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