| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-261  (Poster presentation)

草原生植物種の分布と日射量の関係
The correlation between grassland plant species distribution and solar radiation

*中谷美晴, 野田顕, 大澤剛士(東京都立大学)
*Miharu NAKATANI, Akira NODA, Takeshi OSAWA(Tokyo Metropolitan University)

気候変動対策と生物多様性の保全は、持続可能な社会のために両輪で進める必要がある。近年急速に拡大している太陽光発電所では、再生可能エネルギーの生産と、敷地内の生物多様性の回復を両立する試みが始まっている。パネルによる環境変化は設計によって変化するが、太陽光発電の性質上、植物が利用できる日射量は確実に減少する。そこで本研究では、日本の草原に普遍的な草本種の分布と日射量の関係を明らかにし、パネルによる遮光の影響を受けやすい種を洗い出すことを目的とした。

解析対象は、日本の半自然草原283地点のうち20%以上に分布する草原性植物34種とした。①各種について、一般化線形混合モデル(全国283地点の在不在 ~ 年間平均日累積日射量 + 夏至の日累積日射量 + (1|地域))についてのAICによるモデル選択、②千葉県白井市谷田の半自然草原における林縁から開空部にかけてのベルトトランセクトで得られた在不在データと開空度を用いた決定木、の2つの解析を行った。①, ②の結果から、対象種の分布と日射量の関係と生育に最低限必要な日照量について調べた。

AICによるモデル選択で年間平均日照量と正の相関が示唆された草原性植物はメドハギ、ネコハギ、トダシバ、コナスビ、オカトラノオの5種だった。夏至の日射量と正の相関が示唆された種はススキのみであった。また、決定木の結果、解析対象とした16種のうち上記6種を含む10種は低開空度で観察率が下がっていた。観察率が低下する開空度の境界値は20~45%の範囲であった。

本研究では、マクロ解析から日射量減少の影響を特に受ける草原生植物種を特定した。特定された5種ではミクロスケールでの開空度の減少に対しても観察率低下がみられ、マクロ解析の結果が支持された。今後は調査箇所を増やし、各植物種に必要な日照量について具体的な数値を探るとともに、保全に適した太陽光パネルの設計についても検討を進めたい。


日本生態学会