| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-262 (Poster presentation)
半自然草地は草原生の動植物が生息・生育する環境として重要な役割を担っている。管理が停止した半自然草地を再生させるために、草刈り等の保全活動が行われているが、過去に牧場利用を目的として施肥や播種が行われた草地では、在来植物の多様性は回復しにくい。本研究では、草刈りと在来植物の刈草撒きを組み合わせた施業により、在来植物の回復程度を明らかにすることを目的とした。
調査地は、広島県の北西部に位置する臥龍山の麓に広がる半自然草地(千町原)とし、オオスズメノテッポウが優占する場所に施業方法が異なる3つの実験区を設けた。St.1とSt.2は春と秋に草刈りと草の持ち出し、St.2は秋に在来植物の刈草撒きをおこない、St.3は施業なしとした。2020年から2023年まで、それぞれの場所で植生調査をおこない、土壌理化学性を測定した。
調査の結果、オオスズメノテッポウの被度はわずかに減少傾向にあったが、大きな変化はなかった。St.1とSt.2で出現種数が増加し、St.2では、St.1に比べて、オトギリソウ、ニガナ、サワヒヨドリの被度がやや多かった。アキノキリンソウ、オオバコ、ノハナショウブはSt.2のみで出現した。いずれの実験区でも、表土の容積重は増加傾向にあり、硬度は減少傾向にあった。土壌化学性はいずれの実験区でもほとんど変化が認められなかった。
以上より、春と秋の草刈りと草の持ち出しだけでは、オオスズメノテッポウは大きく減少しないことが明らかになった。草刈りと草の持ち出しだけでも在来植物は回復するが、刈草撒きをおこなうことで、回復を促進させる可能性が考えられた。オオスズメノテッポウが優占する状態であっても、在来植物の回復傾向が見られることから、オオスズメノテッポウの被度を減少させることで在来植物の更なる回復が期待できる。