| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-264  (Poster presentation)

富士通ゼネラルビオトープにおけるヤリタナゴの保護増殖活動
Protection and Reproduction Activities of Tanakia lanceolata in the FUJITSU GENERAL Biotope

*関川文俊(NPOふじ環境研), 和田瑞生(㈱富士通ゼネラル), 岡孝嘉(㈱富士通ゼネラル), 大澤能孝(㈲富士山自然科学研), 山田辰美(常葉大名誉教授)
*Fumitoshi SEKIGAWA(Fuji Environmental Lab.), Mizuki WADA(FUJITSU GENERAL LIMITED), Takayoshi OKA(FUJITSU GENERAL LIMITED), Yoshitaka OSAWA(Mt. Fuji Natural Science Lab.), Tatsumi YAMADA(TOKOHA Univ.)

富士通ゼネラルグループでは生物多様性行動指針に基づき、浜松市の浜松事業所内に約3,000㎡のビオトープを整備した。整備の主な方針は、①浜松市の里地里山に生育・生息する動植物を保全する、②浜松市の有する希少な動植物のジーンバンクとする(主な保全・復元目標種はヤリタナゴとマツカサガイ)などである。
ヤリタナゴは全国的に減少傾向にあり、静岡県では浜松市のごく狭い地域にだけ生息していて、県指定希少野生動植物に指定されている。ヤリタナゴの産卵母貝となるマツカサガイもその周辺に分布が限られている。土地改良事業や河川改修によって、生息環境の減少や河川環境の連続性の阻害などが進み、両種の絶滅が懸念されている。
事業所はこの両種の限られた分布域に存在することから、工場内に生息環境を再生することで個体群の安定化に寄与できると考えた。ヤリタナゴは産卵期に河川の本流から小流に移動してマツカサガイに産卵することから、生活史を保障する小川と池の環境を整備した。マツカサガイは砂礫底を好むことから小川の数箇所に早瀬を設け、砂礫底を創出した。導入後、両種の繁殖が確認され、ビオトープ内に再生した生息環境が良好に機能していることを示した(2016年日本生態学会仙台大会で発表)。
安定的にヤリタナゴの繁殖が確認されていることから、増加した個体を地域に戻す試みを計画した。行政と連携し、流域に生息するヤリタナゴと工場内ビオトープに生息する個体群が遺伝的に同一であることを証明した後に、生息地域への導入(補強)を試みた。生息地域内に整備されている田んぼビオトープを活用し、富士通ゼネラルビオトープで増殖した個体の放流を行った。放流の際には地元の小学生と一緒に学習会や維持管理作業を行うなど、地域と連携した活動を行っている。なお、田んぼビオトープは浜松市、地元市民団体等が「生きものパートナーシップ協定」を結んで管理している。


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