| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-268  (Poster presentation)

MIG-seq法によるコウノトリ個体群の遺伝解析の試み
Application of MIG-seq method for genetic analysis of Ciconia boyciana population

*内藤和明(兵庫県立大・地域資源), 厚見卓郎(京大・院・農), 谷口幸雄(京大・院・農), 佐川志朗(兵庫県立大・地域資源)
*Kazuaki NAITO(Grad. Sch. RRM, Univ. of Hyogo), Takuro ASTUMI(Grad. Sch. Agr., Kyoto Univ.), Yukio TANIGUCHI(Grad. Sch. Agr., Kyoto Univ.), Shiro SAGAWA(Grad. Sch. RRM, Univ. of Hyogo)

 日本の野外コウノトリ繁殖個体群は1971年に絶滅したが,主に海外から導入された創始個体に由来する飼育下繁殖個体を用いた再導入が2005年に兵庫県で開始された.2023年にはリリース個体と野外で繁殖した個体を合わせて約370個体が野外に生息している.飼育個体だけでなく,これまでにリリースされた全ての個体と野外で繁殖し巣立ちしたほぼ全ての個体には足環が装着され個体識別が可能になっており,飼育個体群の繁殖計画および野外への個体のリリースにあたっては個体の血統情報と個体群の遺伝的状況を考慮して計画が立てられてきた.一方で,飼育個体群では創始個体の数が限られているため個体の遺伝的情報をより的確に評価することが,野外個体群では繁殖ペアの増加に伴い全ての野外巣立ち個体への足環の装着が困難になりつつあるため足環以外の方法で個体識別することが課題となってきている.本研究ではDNA情報を用いて個体の同定や個体間の遺伝的関係を評価する方法としてMIG-seqによる解析を試みた.
 試料が入手可能な創始個体および創始個体に近い飼育個体あるいは野外個体の中から計32個体を供試個体としDNAサンプルを得た.プロトコル(Suyama and Matsuki 2015)にしたがって,PCRおよびサイズ選択を行い,次世代シーケンサー(iSeq100)で配列情報を得た後,Stacksを用いてSNPを検出した.半数以上の個体でタイピングされた遺伝子座を用いて個体間の遺伝的距離を求め,血縁関係に基づく近縁度と比較した.その結果,両者には負の相関がみられたがその関係は強くなく,近縁度の数値だけでは表せない個体間の遺伝的関係が示唆された.


日本生態学会