| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-270 (Poster presentation)
新潟県佐渡島固有のサドガエルは、圃場整備や農法によって生じる水環境の変化や外来種ウシガエルの分布拡大などによって絶滅が危ぶまれているものの、好適な生息環境や生態に関する情報が限られており、具体的な保全策は講じられていない。アカガエル科のサドガエルは水田やため池に生息し、上陸後も水辺近くで生息することが断片的な観察からわかっている。また、アカガエル科のカエル類は越冬期を水中で過ごす種がいることが知られている。さらに、近縁のツチガエルと同様、サドガエルも幼生越冬すると考えられている。一般に暗渠排水の敷設がともなう圃場整備が実施されると、田植えが終わった非灌漑期の田面内や水路の水域面積・水量が極端に減る。そのため、本種の保全に配慮した整備を実施するためには、非灌漑期にも本種が越冬可能な環境を創出・維持する必要がある。しかし、非灌漑期の本種成体・幼生の生息環境はわかっていない。そこで本研究では、佐渡島平野部の未整備水田群において、田植えが終わった10月以降、水路・田面・耕作放棄地で本種上陸個体(幼体も含むが以降成体とする)・幼生を対象に定量的調査を実施し、非灌漑期の本種の生息環境の解明を目指した。その結果、10-11月には田面や水路を、11-12月は放棄地内部や近隣に散在する水域の泥の中で見つかった。これらのことから、少なくともこの地域の水田群では本種が放棄地を越冬地として利用することが示唆された。次に、具体的に放棄地内のどの環境条件が越冬地として必要なのかを特定するため、放棄地の繁茂した植物の被覆に着目し操作実験を行った。その結果、露出した水域より、草刈りをしない放棄地内部の枯れ草で覆われた水域で多くの冬眠個体が見つかった。幼生は土水路とコンクリート水路で見つかった。これらの情報を具体的な圃場整備・維持管理計画に組み込むことで、本種の保全に寄与したい。