| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-274 (Poster presentation)
生態学の教育の中で、土壌を教材として生態系や物質循環についての理解の重要性が指摘されているが、土壌学的専門性なしに論議、実践されている例が多くみられる。本ポスター発表では、生態学教育教材としての土壌体認識の必要性および土壌断面標本(土壌モノリス)の重要性ついて報告する。
歴史的自然体としての土壌を土壌体(soil body)と呼び、土壌体の一部を取り出した物質を土壌物質(soil material)といって区別される。一般的には、土壌は土壌物質として認識されており、土壌を土壌物質として捉えるのと土壌体と認識したのとでは、土壌教育だけでなく生態学教育においても,根本的にその教授法が異なる。また、土壌体を構成する土壌層位の持っている機能および土壌型の認識について論究する。
土壌体認識のための土壌モノリスの意義
歴史的自然体としての土壌体認識のために、土壌モノリス(土壌断面標本)を作製した。土壌モノリスを用いることにより、土壌断面観察現場での教育指導が困難な場合やいろいろな土壌型の土壌についてその断面形態的違いについて教育する場合には、非常に効果的な土壌教材としての生態学教育が可能となる。この土壌モノリスを土壌の教育教材とした土壌の観察会を行なうことで、土壌教材を用いた生態学教育の推進が期待できるものと思われる。
土壌の観察会
観察会のプログラムは以下のとおりである。最初に、土壌についての基礎的な説明(土壌のはたらきや土壌の形態、土壌の種類)を講義形式で行う。特に、当日行う観察に沿って、どこを理解してもらいたいのかを簡潔に述べる。次に、観察の森内の切り通し面や露頭を使用して、土壌断面の観察を行う。観察は、上の土と下の土のちがい(土壌層位の認識)をみるために、土の色、土の硬さ、土の粒の形、根の量の分布、石の量と形を観察し、さらに土壌の粒径組成(野外土性)や土壌の可塑性等の観察を行う。