| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-278  (Poster presentation)

工場緑地を活用した生物多様性保全の推進プロセスと企業内外への波及効果
Biodiversity Conservation in Green Spaces at Business Site: Unraveling Processes and Wider Influence

*赤石大輔(大阪産業大学), 中野隆弘(パナソニック), 原田充(パナソニックHD), 吉岡俊彦(京都大学), 徳地直子(京都大学)
*Daisuke AKAISHI(Osaka Sangyo Univ.), Takahiro NAKANO(Panasonic Corporation), Mitsuru HARADA(Panasonic HD), Toshihiko YOSHIOKA(Kyoto Univ.), Naoko TOKUCHI(Kyoto Univ.)

2030年のネイチャーポジティブ達成に向けて、国内外で生物多様性保全に向けた企業活動の重要性や社会からの関心がより一層高まってきた。しかし企業の生物多様性保全は、各企業における様々な障壁を乗り越えなければ実現しない。例えば、企業内に生態系や生物の知識を有し事業を推進できる担当者がいない、生物多様性保全に取り組む指針が無い、企業緑地を有効にデザインする実践的知見の不足などが挙げられる(三輪2011)。
さらには、生物多様性保全の事業化においては、その継続性を担保する予算の持続的な確保、そのための社内での合意、株主への説明、外部専門家との連携など様々な項目をクリアする必要があり、どこから取り組んだら良いかわからない、という悩みを抱えている企業も多い。先進的な企業のノウハウを整理し共有することで、我が国の企業緑地を活用した生物多様性保全が推進されると考えられる。
滋賀県草津市で2010年から取り組まれてきたパナソニック(株)くらしアプライアンス社の共存の森が環境省の「自然共生サイト」に認定されたことを契機に、発表者らはこの取り組みを振り返り、新たな方向性を見いだすことを目的に、共存の森事業の担当者や関係者へのヒアリングを実施し、共存の森事業がどのような形で企画され、現在まで継続されてきたかを時系列で整理した。
結果:共存の森事業継続の要因として、担当者が地元出身で地域の地理や生態系に詳しく、企業内及び地域のコミュニティとの調整にも長けていたことや、地元の環境アセスメント会社が長期的に調査等業務を請け負うことで、共存の森の環境を十分に把握し、調査や管理手法については担当者とアセス業者との綿密なコミュニケーションが取られていたことがわかった。本発表ではさらに企業内外への波及効果、企業の生物多様性保全事業への参画における障壁やそれをクリアするノウハウ、さらに2030年に向けた共存の森の将来ビジョンについて紹介する。


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