| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-280 (Poster presentation)
画像認識を使い生物種を判定する手法は、スマホアプリ等の普及により近年急速に身近なものとなった。また、非専門家でも開発が容易となった。こうしたツールを活用・開発するには、その汎用性を理解する必要があり、汎用性を理解するには学習に対する推論の精度を理解する必要がある。しかし、多くの商用アプリでは、学習情報は入手できないため、自身の開発に活用することが難しい。そこで本研究では、畑作における問題雑草の早期発見を想定した診断アプリを構築し、汎用性を分析することで、ケーススタディとしての情報共有を目的とした。外来草本6種について生育初期の画像を野外で2年間収集し、画像検出アルゴリズムYOLOによる種判別機能を持つアプリを開発した。汎用性を検証するため三つの実験を行った。一つめは、本アプリの使用が想定される野外環境における撮影画像を用いた現地検証である。全13府県から約1000枚の画像を収集し、精度を検証した。二つめは、撮影デバイスの違いによる精度比較である。学習画像に使用・未使用のデバイスを用意し、実験圃場で栽培した同一個体を撮影し、検出精度を比較した。三つめは、被写体の背景の違いによる精度比較である。学習画像で大半を占める耕地を背景とした画像の他に、草地及び実験用トレイを背景とした画像を用意し精度を比較した。これらの結果、学習画像に含まれない表現型変異は検出の妨げになること、学習画像に含まれないデバイス由来の画像でもある程度の検出力は見込まれるが学習画像に多く含まれるデバイス由来の画像と比較すると精度は劣ること、被写体の背景が異なると精度は大きく変化し、条件によっては他種への誤判定が増加すること等が明らかになった。これらは、画像認識の適用可能性や、汎用性向上のために効果的なデータ拡張方法を示唆するものであり、画像認識を利用目的に沿うよう作成・改良する上で有用な情報となることが期待できる。