| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-282 (Poster presentation)
レクリエーション活動のひとつである登山は、人間が山間部を利用する行為であることから、野生動物にさまざまな影響を与える。登山のために開設される登山道は、道路に類似した線形構造物であり、食肉目にも利用されていることが知られている。一般に野生動物は人間を忌避することから、食肉目における登山道利用は人間による利用頻度の影響を受けていると予想される。しかし、人間による登山道利用は曜日や天気の影響を受けていると考えられ、それは食肉目の利用頻度にも間接的に影響を与えているかもしれない。本研究では、登山者が食肉目による登山道利用に与える影響を天気や曜日も考慮して明らかにすること目的とした。
調査は山形県庄内地方の4つの低山地域でおこなった。2022年7月から11月にかけて登山道にカメラトラップを設置した。撮影された動画から、登山者の1日あたりの撮影数も記録した。また、種ごとに1日あたりの撮影数を記録した。登山活動に影響を与える曜日や天気の影響を解析するために、登山者数を曜日(休日かどうか)、気温、降水量、その他の環境要因(傾斜、TPI、周辺広葉樹林率)で説明する統計モデルを構築した。また、食肉目の登山道利用に与える登山者や天気の影響を解析するために、各種の撮影数を登山者数、気温、降水量、その他の環境要因で説明する統計モデルを構築した。
解析の結果、登山者数は降水量の少ない休日に多くなることが示された。食肉目各種の解析結果からは、一部の種は登山者数の多い登山道を避ける傾向があり、多くの種は降水量の少ない日に登山道を利用することが示された。曜日や天気は登山者の意思決定に影響を与え、それが一部の動物の登山道利用に影響を与えることが示唆された。本発表ではさらに解析を進め、登山道利用をめぐる人間と食肉目の関係について議論したい。