| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-284 (Poster presentation)
ネイチャーポジティブを達成する上で、様々な劣化度に改変された熱帯林において、生物多様性を広域評価する手法の開発が火急の課題である。数万km2以上にわたり広がる熱帯林を評価するためには衛星解析の導入が不可欠であるが、(1)広い地理的範囲に適用可能な評価指標がない、(2)衛星解析のレファレンスとなる地上データを得るためのコストが大きい、という二点の問題が生物多様性評価を妨げている。
この発表では、ボルネオの木材生産林における生物多様性指標として提案された「樹木機能群の混合比(原生林指標種/劣化林指標種)」の有用性を議論し、さらに衛星画像から予測可能かをボルネオにおいて検証する。また、これまで500km2の生産林の生物多様性評価には50点の地上調査区が必要とされてきたが、幅広い地域の調査区情報を同時に解析することで(マレーシア・インドネシアから497プロット)、必要な調査区数を減らすことができるかを検証する。複数の機械学習モデルを統合しアンサンブルモデルを作成、Landsat の分光反射から多様性指標を予測した。モデル精度と調査区密度の関係を調べ、植生情報の地域間統合により、どの程度地上調査を省略できるかを検討した。
機能群混合比の予測精度はR2=0.61であり、この多様性指標が衛星画像から高い精度で予測可能であることがわかった。調査区の平均密度(予測する地上調査区の周辺15kmにある他の調査区の数)は15プロットであった。予想に反し調査区の密度と予測精度には有意な関係が見られなかった。一方で、予測対象地域の植生データを訓練データから除いた場合、すなわち地上調査情報が全くない地域へのモデル外挿精度は、R2=0.43まで低下した。これらの結果は、地域間で植生データを統合することで、各地域で必要な地上調査区を大幅に低減できる可能性(例えば10-15地点)、そして、地域間での植生情報の共有が国スケールで多様性のモニタリングを実施する上で重要であることを示唆している。