| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-285  (Poster presentation)

センペルセコイアの樹皮の特性と耐火性における鉛直変化
Vertical variation in the properties and fire resistance of Sequoia semperviens bark

*嶋村鉄也, 鍋嶋絵里, 土井奈儀子, 杉元宏行(愛媛大学)
*Tetsuya SHIMAMURA, Eri NABESHIMA, Nagiko DOI, Hiroyuki SUGIMOTO(Ehime University)

カリフォルニア州沿岸部に生育するセンペルセコイアは頻発する火災に対して適応している。火災時には最初に被害を受けるのは樹皮であり、樹皮が耐火性に対して果たす役割は大きい。また、火災時には樹木の上部と比較して下部がうける被害が大きいと想定される。そこでセンペルセコイアの樹皮形質が鉛直方向にどのような変化をしているかを本研究では調査した。
 愛媛大学農学部附属演習林内のセンペルセコイアを伐採し、円盤と樹皮を採取し分析を行った。枝下高である7.3m以下は1mおきに、それ以上は3mおきに35mまで採取した。採取した試料の外樹皮・内樹皮の厚さ・密度(かさ密度と真比重)、含水率、三相組成、有機画分(フェノール類・リグニン)を計測した。高さ0.3mのサンプルに関しては内樹皮と外樹皮の熱重量分析をおこないTG-DTAを測定した。
 分析の結果、外皮は内皮と比較して含水率および液相率が低く、気相率が高かった。有機画分に関しては、フェノール類の濃度が内皮で高く、リグニン濃度は外皮で高かった。これらの外皮と内皮の特性は高さとともに変化することはなかった。樹高とともに変化したのは樹皮の厚さであった。外樹皮は0.3mでは30mm程度の厚さであり、枝下高の高さでは15mmとなっていた。その厚さは20m程度まで継続し、それ以上の高さで減少していた。内樹皮は27m程度の高さまで7mm程度と一定の値であった。熱重量分析の結果外皮は内皮と比較して発熱量が高く、残渣重量は高った。
一般に、樹木の耐火性は樹皮の厚さによって担保されている。本課題ではセンペルセコイアは下部の樹皮を厚くすることによって、火災にさらされやすい樹木下部の耐火性を確保していることが明らかになった。そして、内樹皮は含水率・フェノール類の濃度を高めることによって火災時に外樹皮を通して伝わる熱に対する耐性を高めていると考えられた。


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