| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-290 (Poster presentation)
特定の種の減少やそれに伴う生態系サービスの劣化の原因となる自然資源の収奪的な利用は経済的な需要によって引き起こされてきた。したがって、自然資源の需要の動向を把握できれば、資源量が危機的な状況に至る前に、効果的な資源管理のための指針を提言ができると考えられる。そこで、国内で利用されている多様な広葉樹種の原木価格を例に、価格の決定要因を解析し、市場価格から需要の傾向の把握することができるか検討した。本研究では、全国の原木市場で取引された広葉樹原木を対象に原木の価格を説明するモデルを構築し、種、直径、長さ、地域、年代といった要因の影響を比較した。原木価格は直径によって最も説明され、原木の長さは原木価格―直径の傾きを増大させることが示された。また、これらの要因の関係性は種によって異なっていた。さらに、樹種ごとの産地は地域的に偏っていたが、解析対象である2010年から2019年にかけての原木価格の地域差は年変動よりも大きかった。したがって、少なくともこの10年間では特定の地域の特定の種が安定して高価格で取引されていると考えられる。本研究で示された、地域的に限られた樹種が安定して高価格で取引される傾向は、需要の高い特定の資源が継続的に過度な利用に晒される可能性を示している。