| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-292 (Poster presentation)
2050年の脱炭素社会実現に向けて、再生可能エネルギーへの移行などの取り組みが進行すると同時に、森林のCO2吸収源機能への期待が寄せられている。しかし、日本の森林の吸収量は、今後、減少すると予想されている。そのため吸収源の増強が必要である。
一方、過去数十年にわたって、平地の里山林が伐採され建物用地に利用されてきた。そのような地域でも人口の流動と減少により、空き地が増えている。空き地を新たな吸収源の森とすることは脱炭素社会実現を支援すると考えられる。そこで、県南部で開発が顕著に行われてきた茨城県を例として、国土3次メッシュ(1km2)のデータを用いて土地利用が建物用地であり、かつ、メッシュ内の人口が一定以下となった場合、森林に転換するとし、将来的な吸収量についてシナリオ分析を行った。
県人口は現在の290万人から徐々に減少し、2100年にはおよそ1/3の102万人となると予想されている(日本版SSP2人口シナリオ)。2030年から2100年まで、10年ごとにメッシュ内人口が100、500、1000人以下である場合、その土地は人工林(スギ、ヒノキ)ないし天然林(広葉樹)に利用方法を変更するとした。また、施設用地(住宅以外の公共施設や工場など)も人口減少に比例して減少するとして、不要の用地を人工林ないし天然林の森林に変更するとした。
以下、結果である。人口の減少にともなって建物用地は徐々に森林に変更され、2100年には建物用地の1/4ないし1/2が森林となった。森林の蓄積量は、2050年時点は46万m3以下と小さいが、その後、急激に増加する。人工林とした場合には、現在の県森林全体の蓄積量(3900万m3)の14〜24%程度、天然林とした場合には4〜8%程度の蓄積量となる。また、現状の県の森林のCO2吸収量(40万トン/年)に対し、新たな吸収源の森は2050年には数万トン/年しかないが、2100年には6〜17万トン/年となり、長期に渡って大きな貢献をすると考えられる。