| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-294 (Poster presentation)
砂丘観光でにぎわう国指定天然記念物/山陰海岸国立公園特別保護地区の鳥取砂丘内には,砂丘内の砂移動モニタリングと砂丘内での位置表示の目的で,1980年代から木製調査杭が設置されている。現在は100 mおきに計119本が存在する。調査杭はアルファベット列と数字列の組み合わせで砂丘内の位置を示し,北西端のA-0から始まって南東側はP列まで,海岸線沿いの北東側が15列まである。調査杭は杭周辺の砂が風で削られると浅くなり,砂が溜まると埋もれる。調査杭の地上からの高さは毎月月末に計測され,100 mスケールではあるが,これにより砂の動きがモニタリングされている。本研究では2011-2020年の期間に調査杭の高さを毎月計測した結果から,鳥取砂丘内の砂移動状況を明らかにし,植物分布との関係について検討した。
10年間の地形変化をみると,鳥取砂丘で最も起伏の大きな第2砂丘列南側のJ列中央部で6 mの砂が堆積し,最も地形変化が大きかった。砂丘東端にあたるK-15付近でも2 mの砂堆積による地形変化があった。侵食側で最も大きな変化があったのも第2砂丘列南側のJ列中央部で,3m以上削られた。堆積・侵食ともに第2砂丘列の中央部が最も活発であった。中央部に次いで砂移動が活発だったのは砂丘の東端だった。砂丘の北西端と丘間低地であるオアシスは砂移動が不活発で10年間でみても砂がほとんど動いていなかった。これら砂移動量と植物の分布との関係をみたところ,主要種の中で最も砂移動が活発な場所に分布していたのはコウボウムギ,最も動かない場所に分布するのはオオフタバムグラだった。以上より,鳥取砂丘内の砂堆積/侵食には北西風の影響が最も大きいであろうこと,砂移動は砂丘中央部で最も活発であり,同一地点でも堆積と侵食がひんぱんに入れ替わることが明らかとなった。植物の分布には砂移動量との関係が見られ,砂移動への耐性が影響していることが考えられた。