| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-296 (Poster presentation)
気候変動に伴う水害リスクが増大するなか、流域治水に資するグリーンインフラ(以下、GIとする)への期待が高まっている。特に郊外部では、人口減少・少子高齢化を背景に増加が懸念される遊休農地等の低未利用地を遊水池化することで多機能なGIを創出できる可能性が注目されている。しかし、低未利用地の遊水池化には、一時貯留・浸透のための簡易インフラ整備や水・植生管理に多くの労力がかかること、水は自然流下に委ねられインフラ機能発現の空間的・時間的なばらつきが大きいこと等の課題がある。
上記課題に対し、本研究では遊休農地を対象に、「水のアクティブ制御(順応的に水管理を行う制御システム)」によるGI創出を低コストで実現する技術の成立可能性と有効性の検証に取り組んだ。具体的には、1)アクティブ制御システムのプロトタイプ試作、および2)フィールドにおける効果実証(流出抑制、生物多様性、水質浄化、管理省力化)を行った。対象地は千葉県富里市の遊休農地(約1650㎡)とし、隣接するコンクリート水路を堰上げて遊水池化した実証フィールドを整備し、アクティブ制御をする制御区と対照区に区画した。実証期間は2023年8月~12月である。
1)については、ICT技術を活用したセンシング装置(水位計・気象センサー等)や水管理装置(小水門・仮設水のう)を組み合わせて、遊休農地の水位を遠隔制御するシステムを試作した。その結果、遠隔制御で平常時の水位維持や降雨時の貯留容量確保が技術的に可能であることが示唆された。
2)については、遊水池化によって流出遅延や湿地生態系(レッドリスト記載種を含む水生動植物の出現)の回復、栄養塩(窒素・リン)の抑制、樹林化の抑制等、多様な効果の発現が示唆された。
今後は、低未利用地の遊水池化によるGI創出の促進に向け、多様な低未利用地への展開可能性の検証やアクティブ制御効果の継続検証に取り組んでいく。