| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-300 (Poster presentation)
訪花性昆虫は花蜜に微生物を持ち込むことがあり、それにより花蜜内に微生物群衆が形成される。その微生物は蜜の成分を変化させたり、受粉メカニズム自体にも影響を及ぼすことが知られている。ソバは2種類の花を持つ自家不和合性であり、さまざまな昆虫類の送粉サービスによって受粉を行なっている。本実験ではソバの花蜜内に細菌を導入し、それによる結実量の変化や種子形成への影響について調べた。
ソバの花に濃度を変えて細菌を導入し、処理と種子の結実率や形質との関係を調べた。ソバ花蜜にはスクロース、グルコース、フルクトースの3種類の糖が含まれている。それらの含有濃度に近づけた人工蜜に、実験圃場で採取された細菌 Pantoea stewartii を一定量混合した。導入時に、自然界で形成される細菌量と同程度となるように調整し、それより濃度の高いもの、人工蜜のみをそれぞれ花の蕊付近に導入した。数ヶ月後、マークされた花や種子を全て回収し、未受粉、しいな、結実のいずれかを記録した。
自然界に近い量の細菌を導入した花では受粉率が有意に下がり、導入実験を行わなかった花が最も結実率が高くなった。自然界の花蜜内で見られる細菌濃度に近づけると受粉率が低下したことから、本実験で導入した P. stewartii は自然界において送粉サービスに負の影響を与えていることが予想される。先行研究では、ソバ畑周辺の畦の刈り取り回数や、畑と森林の距離が送粉サービスに影響を及ぼし、受粉率を変化させることが明らかになっている。それらと併せて、微生物群衆が及ぼす送粉サービスへの影響についてさらに研究を進めていきたい。