| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-304 (Poster presentation)
外生菌根菌はブナ科・マツ科など森林で優占的な樹木と相利共生を行う菌類の機能群である。外生菌根菌の群集組成は時空間変動を示すことが知られている。これまで空間変動の記述は数ヘクタール以下程度の単一林分内での調査や、複数林分間での菌種組成の比較に基づいて行われてきた。しかし、時間変動は単一林分での調査がほとんどであり、そのため時間変動パターンが同一森林内の異なる場所間で同調しているのか、あるいは外生菌根菌群集の森林内での分布は時間に伴い変化するのかといったことはわかっていない。
本研究では、外生菌根菌群集組成の時空間動態の解明を目的として、北海道東部に位置する京都大学北海道研究林標茶区のカラマツ (Larix kaempferi) 植林地9林分 (林齢45~65年、林分間の距離は0.5~7 km) において、外生菌根菌群集組成の継続的な調査を行った。調査は2022年6, 8, 11月および2023年6月に行った。調査林分内に20×20mのプロットを設置し、プロット内でカラマツ根を含む土壌ブロック (5×5×5cm) を4mおきに36個ずつ採取した(合計1296個)。得られた土壌ブロック中のカラマツ根に対し、菌類rDNAのITS1領域の配列解読を行い、得られた配列を97%の相同性閾値で操作的分類群 (OTU) 分けすることで、調査地における外生菌根菌OTU組成を記述した。
9林分×4回の調査で合計209 OTU (1林分×1回あたり39.5 ± 10.0 OTU、平均±標準偏差) の外生菌根菌が得られた。OTU組成は調査日間では有意な変化を見せなかった一方、林分間では有意に異なり、今回の時空間スケールでは時間変動より空間変動の方が大きいことが示された。また、検出林分数の多いOTUや各林分の優占OTU (検出土壌ブロック数の多いOTU) は調査期間を通じてほぼ変化しなかった。これら時間変動の小ささを示唆する結果の一方で、林分間での共有OTU数が調査日によって異なるという結果も得られており、群集組成の空間構造が一部時間によって変化することも示された。