| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-306 (Poster presentation)
近年の需要増大に伴い、多種多様なプラスチックが環境中に放出されている。こうしたプラスチックの化学的特性に応じた分解プロセスの違いを理解するためには、様々なプラスチック素材における微生物群集組成とその分解過程における群集集合プロセスの定量化が必要である。本研究では、37種のプラスチック(n=3)を対象に河口水中とともに14日間の培養試験を行い、培養前後の微生物群集組成を16SrRNAアンプリコンシーケンスで計測した。さらに、解析系統的ビンベースヌルモデリング(通称iCAMP)に基づいて培養前後の群集集合プロセス(決定論プロセス:異質選択、同質選択、確率論プロセス:分散制限、均質化分散、ドリフト)を定量化し、各種プラスチック特性との相関を解析することで、プラスチック特性と群集交代メカニズムの関係性について考察した。
プラスチックの化学構造と特性は密接に関連しており、アジピン酸モノマーを多く含むプラスチックは分子運動性が高く、水親和性が高く、易分解性である一方で、芳香族モノマーを多く含むプラスチックは逆の傾向を示した。微生物群集もこの傾向に従い、アジピン酸と芳香族プラスチックの間で明確に異なる群集構造を有していた。
また、分子運動性が高く、水親和性が高く、易分解性のプラスチックであるほど、群集交代における異質選択(異なる環境における選択効果)の効果が高く、同質選択(類似環境における選択効果)の効果が低かった。易分解性プラスチックでは、微生物の生息環境が水から厚いバイオフィルムへと急速に進行した結果、培養前後の環境の差異が大きくなり、異質選択の重要性が増大(逆に同質選択は減少)したと考えられた。また確率論プロセス(分散制限・均質化分散・ドリフトの総和)は同種プラスチック内の群集のばらつきと正の相関があった。つまり確率的な群集交代は、群集交代を不安定化させることで、群集のβ多様性を生み出すと考えられた。