| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-307 (Poster presentation)
種内変異の1つである”雌雄差“は、動植物に広く見られ、共生関係にある他種生物群集に影響を与えることが知られている。また、この種内変異の影響の程度や様相は、それらを取り巻く環境によって変化することが考えられる。
先行研究では、和歌山に分布する雌雄異株常緑広葉樹であるヒサカキEurya japonicaとハマヒサカキE. emarginataにおいて、雌雄差が、花蜜に棲息する微生物の出現頻度や存在量だけでなく、その種構成に対して顕著な影響を与えることが明らかになった。
そこで、本研究では、神戸大学敷地内に分布するヒサカキを対象に、雌雄差が花蜜内微生物群集に与える影響について知見を得ること、また、自然的な環境である和歌山と、人為的な環境である神戸大学で結果の比較を行うことを目的とした。
開花前の袋掛けによって昆虫の訪花を抑制した雌/雄の花と、袋掛けを行っていない雌/雄の花から採取した花蜜を菌類用の培地と細菌用の培地に撒き、成長したコロニーの出現頻度と存在量を条件ごとに比較した。出現頻度は、コロニーの有無によって測り、存在量は一定の蜜量中に存在するコロニー数として測った。
和歌山と神戸大学では、菌類と細菌類に関して共に異なる結果が得られたことから、何らかの環境条件の違いによって雌雄差が微生物群集に与える影響が変化することが明らかになった。
現段階では遺伝子解析によって、細菌類のAcinetobacter sp., Pantoea sp., Erwinia sp. などの花蜜でよく見られる属が見つかっている。また、菌類ではFilobasidiu.sp, Exobasidiu.spなどが見つかっている。
今後は、雌雄差や袋の有無によって花蜜内微生物群集の種構成にどのような影響がみられるのか、和歌山のヒサカキとの微生物群集の種構成にはどのような違いがみられるか、などの問いについて遺伝子解析を通じて更なる研究を行う予定である。