| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-310  (Poster presentation)

土壌微生物と付着基質としてのアルギン酸ゲルの親和性評価
Evaluation of affinity of soil microbes for alginate scaffolds

*町田郁子, 吉竹晋平(早稲田大学)
*Ikuko MACHIDA, Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ.)

微生物は土壌環境中で、土壌の質の改良や植物の生育促進などにおいて重要な役割を果たしている。そのため、農業や環境修復などの分野では、土壌微生物の機能を利用する種々の取り組みに注目が集まっている。細菌は、物質表面に付着することをきっかけとし、集合体となりバイオフィルムを形成することで、その機能が効果的に発揮されることがわかっている。このような背景から、微生物の付着に適した基質は、微生物の効率的な利用に有用であるといえる。そこで我々は、アルギン酸ゲルに着目し、付着基質としての特性を解明することを目的として、土壌微生物との親和性を評価した。

多糖類であるアルギン酸は、コンブなどの褐藻類に多く含まれること、また微生物により産生されバイオフィルムの構成成分となることが知られている。アルギン酸は2価以上の金属イオンにより架橋されゲルを形成する性質を持つが、我々はこれまでの研究において、鉄(Ⅲ)イオンによりゲル化させたビーズ状のアルギン酸が微生物の付着に適した表面を持つことを、クリスタルバイオレット染色による間接的な評価により示した。本発表では、さらなる詳細な解析のため、鉄(Ⅲ)イオン架橋アルギン酸ゲルに対する微生物の挙動を、顕微鏡観察により直接的に評価した結果を中心に報告する。

顕微鏡観察を行うにあたり、まず試料作製に適した薄膜状のアルギン酸ゲルを作製した。次に、市販の培養土中にそのゲルを設置し、25℃にて暗条件下で培養した。培養後1週間から4週間までのアルギン酸ゲルを土壌中から回収し、薄膜上の土壌微生物の様子を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、土壌微生物がゲル上に付着して時間経過に伴い増殖し、バイオフィルムを形成することが確認でき、鉄(Ⅲ)イオン架橋アルギン酸の付着基質としての有用性が示された。


日本生態学会