| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-02 (Poster presentation)
なぜ,生き物は群がるのだろうか?その一例として人間を取り上げるなら,人間という生物は哺乳類の中でも非常に弱く,生きるために群れる必要があったとされている。また羊やカモやイワシなどの多岐にわたる生物も群れることで命を守ってきた。しかしミミズが群がる要因はまだ知られていない。10年継続しているミミズの研究の過程でミミズを探すために土を掘ってきたが,1度たりとも地中でミミズが群がる「ミミズ団子」を見つけたことがない。しかしミミズを採取し容器に入れたとたんミミズが団子状になる。この習性をヒントにまだ明らかにされていない生態系の解明ができればと思う。
調査1~3では,ミミズ団子でいるより水分量が多い土をシマミミズが好むことが分かった。調査4では,水分が多くなるほどシマミミズは活発に動き広範囲に散らばっていたことが分かった。
本研究では,シマミミズが生きるためには,体内の水分量が一定量保持されることが生命線であるということを本能的に分かっている生き物だということが分かった。ミミズとはかけ離れた存在として認識されている我々人間もミミズ同様,体内の水分量の減少が命の危機に関わってくる。また,シマミミズの体は細いので少しの脱水でも命取りとなるため,ミミズの口先や体表から水分量を察知し,住みよい環境を即座に判断する能力が備わっていることが判明した。また一見協力しているように見えたミミズ団子のまま土に潜るという行動には本当に驚いたが,それもまたミミズが 日頃住んでいる環境に近い状況になるまで,体表を乾燥から守る術であったことに,ミミズの内に秘めた凄みを痛感した。この研究を通して,何気ない生き物にもそれぞれが命を次の世代に継いでいくために培われた本能があり,それを忠実に守りながら日々生きている生物が尊重され,共存できる住みよい環境を我々人間が守っていかなくてはならないと思った。