| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-03  (Poster presentation)

ネジバナの特徴から探る植物の進化 ~花粉塊崩壊と赤白の花の意味~【A】【O】
The evolution of plants based on the characteristics of Spiranthes sinensis ~The meaning of the pollinium collapse and the bicolor flowers~【A】【O】

*熊谷緋沙子(千代田区立九段小学校)
*Hisako KUMAGAI(Kudan elementary  school)

1.はじめに
ネジバナというランは、花粉塊が昆虫に送粉されることが知られている。ネジバナの送粉者は日中しか調べられていなかったが、 2019~2022 年に夜間を中心に 6 万 7083 枚の写真を撮影して調べた結果、いろいろな雑食の虫や肉食の虫が体に花粉塊をつけていたことを発見した。
そこで2023 年はネジバナの特徴から二つの仮説を立てて研究した。
(1) 花粉塊が崩壊するランは、花粉塊を体につけられない小さい虫にも来てもらうことで送粉や自家受粉を手伝ってもらっているのではないか。
(2) 上下が赤白の花は、日中飛ぶ昆虫に目立つよう上は赤色、夜に下からくる虫に目立ちやすいよう下が白色なのではないか。
2.実験の方法
2023年は1005時間、10万553枚の写真を撮影してさまざまな花の訪花昆虫を調べた。
(1) キンランとギンランというランに訪れる昆虫を観察し、ネジバナをつぼみの時から細かい網にダンゴムシと入れて受粉するか実験した。
(2) 赤白のユキノシタやミズヒキで昼夜に来る昆虫を観察した。白い花びらを取って赤い花びらだけにしたユキノシタの訪花昆虫も比較した。
3.結果
(1) キンランもギンランも花の中に入り込むアリが観察された。 受粉実験のネジバナは一部受粉し、受粉した花の中には崩壊した花粉塊をつけたアリがいた。
(2) ユキノシタに日中来ていたのはハチやアブだったが、夕方からは多数の蚊が来ていた。赤い花びらだけにしたユキノシタに夕方来る蚊は少なくなった。
4.考察
(1)一部のランが花粉塊を崩壊させるようになったのは、ハチなどに花粉塊を送粉してもらえなかった場合の保険のためかもしれない。
(2) 上下赤白の花は、生息場所の昆虫が活動する時間帯それぞれで目立つことで、より多くの種類の昆虫に送粉してもらえるようになったのではないか。赤白の花と昼夜の訪花昆虫の関係は植物全体に当てはまる、科を超えた特徴かもしれない。


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