| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-05 (Poster presentation)
タンポポの分布状況の変化が地域の自然環境の指標になることから環境調査として定着した。2010年に「タンポポ調査西日本」が行われたが、伊賀市の状況は網羅されていない。そこで、本研究では伊賀市のタンポポの分布状況を明らかにすることを目的とした。種同定には総苞片が反り返っている個体を外来種のセイヨウタンポポ、総苞片が反り返っていない個体を在来種のカンサイタンポポとした。総苞片の反り返りが中間形質を示すものについては雑種として表現型で判断し、上野高校周辺と上野城、田園地帯、その中間地点をルートセンサス法で分布状況を調べた。さらに表現型がカンサイタンポポ、シロバナタンポポ、セイヨウタンポポ、雑種のものをそれぞれ5~8個体サンプリングしDNA解析を行った。調査の結果、カンサイタンポポ、セイヨウタンポポ、シロバナタンポポ、中間形質を示すタンポポが確認できた。カンサイタンポポは田園地帯、上野城内に多く見られた。セイヨウタンポポは上野高校周辺の道路に多く見られた。シロバナタンポポは在来種と外来種が隣接してい生育する場所で確認できた。DNA解析の結果、在来種は表現型と遺伝子型が一致し、表現型が外来種であっても雑種の場合があることが明らかとなった。また、表現型が雑種だと判断したものはほとんどが在来種の遺伝子型を示したが、1個体のみ雑種の遺伝子型を示した。シロバナタンポポはDNA解析を行った個体のすべてが雑種の遺伝子型を示した。在来種は田園地帯に多く、市内に外来種が多く見られたことから伊賀市の分布状況は、三重県全域と同様の傾向を示すことが分かった。在来種であるシロバナタンポポが雑種の遺伝子型を示したことから、伊賀市ではシロバナタンポポの雑種化が進んでいると考えられる。