| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-06 (Poster presentation)
近年、暖冬化や娯楽の多様化によりスキー人口が減少し、志賀高原ではこの10年間で約20か所のスキー場が閉鎖された。スキー場を作る際に400haのエリアで多くの木が伐採され、近年の地球沸騰化に伴い本来の志賀高原の美しい森が失われていることが懸念される。
志賀高原スキー場跡地では歌舞伎役者市川團十郎氏が主催する植樹活動が行われており、植栽方法は植生学の研究者であった故 宮脇 昭氏が提唱した潜在自然植生の樹種群を用いた密植、混植型植樹で、宮脇方式として国内外に知られている。中野西高校はこの活動に参加し、植栽された樹木の成長モニタリングを植栽当初から継続してきた。
本発表ではこれらのデータから植生回復活動を効果的に行い、環境問題の解決の助けになればと考え、2015年から植栽地のモニタリング(最長9年分)を通して得られた生態的知見を発表する。
植栽地は長野県山ノ内町志賀高原に位置する3カ所(標高1713m、1654m、1566m)のスキー場跡地で亜高山帯~冷温帯上部に位置する。植栽された樹木を植栽地ごとに選び、樹高と根元直径を毎年計測した。データ解析から樹種の成長、生存率などを算出し、植栽地の降水量や積雪量の気象データとの比較検討を行った。
その結果、以下のことが明らかになった。
(1)降水量が植物の成長で重要な要因の一つと判明した半面、雨が降りすぎても根腐れなどの原因となり植物が枯れてしまう。
(2)多種の樹木が同じ区域に無作為に植樹する性質から早く成長することができるトウヒなどは問題なく成長できるが、イチイやウワミズザクラなど成長が遅い樹種はほかの木に競争で負けたためか、生存率が低くなっていた。
なお、この研究活動は今年度、三五自然共生基金の助成を受けて行うことができた。
今後は、長期的にデータを集めるとともに降水量以外の外的要因のデータ収集することが必要だと考え、志賀高原の気候にあったより適切な植樹方法の模索を目標にしている。