| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-08 (Poster presentation)
クスノキはクスノキ科の常緑高木であり、秋に結実する鳥散布型の樹木である。鳥散布型を行う植物は、鳥類のエサとなる果実を結実する。しかし、そのまま地上に落下した種子は果肉がある状態となってしまう。クスノキと同じクスノキ科の樹木であるタブノキは、果肉が発芽を抑制するはたらきがあることが報告されている(三重大学 未発表)。本研究では、クスノキでもタブノキと同様に果肉の有無が発芽に影響を及ぼすのか、また、種間競争による発芽への影響を明らかにすることを目的とした。上野城に生育するタブノキ、イロハモミジからそれぞれ800個種子を採集し、果肉の有無による発芽への影響を調べるため、400個の果実の果肉を除去し(果肉除去群)、残りの400個を果肉非除去(対照群)とした。温度による発芽の影響を調べるため、10℃、20℃、30℃、自然環境下の4つの条件で発芽試験を行った。また、種間競争による影響を調べるため、1容器にクスノキ、イロハモミジの種子を10個ずつ播種した(集団播種)ものと、1つずつ播種した(単独播種)ものを用意した。各温度条件下で集団播種・果肉有、集団播種・果肉除去をそれぞれ3セット、単独播種・果肉有、単独播種・果肉除去をそれぞれ30個用意し、発芽試験を行った。水やりは1日1回行った。自然環境下のものは集団播種・果肉有、集団播種・果肉除去を11セット、単独播種・果肉有、単独播種・果肉除去を110個用意して観察を行った。各温度で播種したものは2か月以上経っても発芽が見られなかった。自然環境ではクスノキは冬を越えて発芽する。一度、休眠状態になり発芽する種子である可能性がある。そのため各温度で発芽が見られなかったと考えられる。そこで今後、10℃のものを30℃に温度を上げ、観察を行う。加えて3月上旬から下旬にかけて自然環境下での発芽率を求める。