| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-10 (Poster presentation)
近年、キノコは持続可能な社会の実現に向け様々な分野で研究されている。また、森林生態系においては、分解者としての役割を担っている。しかしながら、自然環境下での調査では十分に活用されていないのが現状である。本研究では、森林におけるキノコの生態調査及び土壌動物との関係を定量化することで、その存在と役割についてより詳細に評価することを目的とした。
本研究の手法は、校内の山林をフィールドとし、①キノコの子実体の発生状況とその発生環境、降水量などの環境条件を月ごとに比較した。また、②キノコの生育する場所とそうでない場所それぞれから土壌を採取し、ツルグレン装置を用いて土壌動物の個体数、種数を比較した。
結果として、①本校の山林では、気温が15〜25℃程の4月〜7月、9月〜11月に発生数が増加し、その中でも特に降水量が多い月で多くなる傾向がみられた。また、2023年は一年を通して大幅に発生数が減少した。これは例年降水量が多くなる4月の降水量が極端に少なかったことや例年よりも気温が高く、日照時間が著しく長くなったことが関係していると考えられる。また、②キノコが生育する場所はそうでない場所と比べ土壌動物の個体数、種数ともに多くなる傾向がみられた。これは土壌動物とキノコの生育環境の一致、そしてキノコが土壌動物の捕食対象となっていることが理由として考えられる。また、ダニにおいては、キノコを餌としないコナダニの第二若虫が多く確認されたが、これは子実体の発生が減少すると、個体数が減少した。このことから、コナダニの便乗先となる生物と子実体に密接な関係があることが考えられる。
以上の結果より、自然環境の変化や土壌動物との関係から、キノコが生態系における環境指標になる可能性が示唆された。今後は計測条件を増やし、本校で行われているバイオチャーの研究とも比較することで、発展的な検証を行いたい。