| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-13 (Poster presentation)
河川の淡水域における生物多様性は,様々な人為的活動により低下している。生物多様性の保全には,現在の魚類などの生物相を調査し,過去の資料と比較し,その変化を評価する必要がある。私たちが住む石川県では,大規模な魚類相の調査は1996年以降,約30年間実施されていない。本研究では淡水魚類相の変遷を評価することを目的として,近年用いられている環境DNAの手法により,石川県の能登地域で魚類相調査を行った。本年度は能登地域で調査したが,来年度以降は石川県全体に調査地を拡大する予定である。また能登半島では2026年にトキの放鳥が計画されている。トキの餌となる淡水魚類の基礎的データの提供も目的とした。
採水は1996年の調査と同じ地点(七尾市周辺の21水系,50地点)で行った。夏(7,8月)と秋(10,11月)の2回採水した。主に橋の上からロープ付きのバケツで採水し,橋の上から採水できない場合には,長さ約2.5 mの柄杓で採水した。河川の流心から1 Lを採水し,採水バックに入れ,オスバン1.0 mLを加え,クーラーボックスで冷やし実験室に持ち帰った。サンプルは水循環式アスピレーターと0.25μmフィルターでろ過した。フィルターからDNA抽出キットでDNAを抽出後,① ドジョウとアユを対象としたPCRによる種特異的解析と② 網羅的解析(MiFishによるメタバーコーディング法)を行い地点間,河川間で比較した。
種特異的解析では,1996年の確認地点に加えて,アユ・ドジョウそれぞれ新たに11水系,12水系で生息を確認できた。しかしながらこれが「もともといなかった水系に生息が広がった」のか「1996年の現地調査で確認できなかった」のかは判断できない。今後現地での聞き取り調査や,文献による調査が必要である。網羅的解析による魚類相の結果もあわせ,能登地域の淡水魚類相について考察する。