| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-14 (Poster presentation)
気候変動に伴って河川の水温上昇が起こった場合、活動量が増加することで生物量が増加する例や、水温が好適水温を上回った種では活動量が減少し、生物量が減少する例が報告されている。このように、気候変動は生物に影響をもたらしていると考えられるが、それは魚種と場所で異なる。そこで、私達の身近な滑川で今年の異常気象の影響を明らかにした。
滑川本流とその支流である月中川との合流地点において支流側を2020年8月から2024年1月にかけて調査を行った。植物の生えた河岸を中心に下流から上流に向けてタモ網で魚を捕獲し、種類と個体数を調べた。捕獲のできない大型種や特定外来生物は目視で確認した。並行して、調査時の水面付近の水温・水流・水深の計測をした。降水量と気温は熊谷の気象台のデータを使用した。
2023年の平均気温は、2020〜2022年と比較すると7〜9月にかけて高い値であった。2023年の降水量は5、6月で多かったが、7月は極端に少なくなった。魚の変化について、2020〜2022年に多かったタモロコが2023年5月以降特に減少し、ナマズは5、6月に増加した。これは5、6月に多かった降水による川の水量増加でナマズが増え、タモロコが捕食されたためと考えられる。過去3年間多かったフナは7月から減少が目立ち、2022年まであまり見られなかったメダカやドジョウが増加した。フナは水深のある水域を好む一方、メダカやドジョウは浅い水路等にも適応するため、この変化は7月の降水量の少なさと気温の高さによる水位の低下が原因である可能性が示された。これらの魚種は比較的水温の変化に強く、2023年の高温でも好適水温内であるため、魚種の変化は水温より水位の変化によるものが大きいと示唆された。以上より2023年の気温上昇と降水量の変化は月中川の水位に変化をもたらし、魚の種組成に大きな影響をもたらしたと考えられる。