| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-15  (Poster presentation)

横須賀高校に生息するトウキョウサンショウウオの継続的な保全活動【A】【O】
Continuous conservation activities for Hynobius tokyoensis at Yokosuka High School【A】【O】

*山口和穂, 浅岡蒼, 阿部正治, 川井柊弥, 湯浅実華(横須賀高校)
*Kazuho YAMAGUCHI, Sou ASAOKA, Masaharu ABE, Shuya KAWAI, Mihana YUASA(Yokosuka High School)

 トウキョウサンショウウオHynobius tokyoensisは、関東地方に分布する止水産卵性の小型両生類である。本種は絶滅危惧種や特定第二種国内希少野生動植物種に指定されており、生息地・個体数の減少が懸念されている。神奈川県立横須賀高等学校科学部は、本校敷地内の山に生息する本種の産卵場所が消失しかけている状況を受けて、2016年から現在までの約8年間、保全活動を行なった。活動内容は、産卵数のモニタリング、水場の整備、一時飼育である。またその他に地域のイベント等で啓蒙活動を行った。
 産卵数のモニタリングとして、繁殖期1‒5月に産卵場所で卵嚢を数えた。雌1個体は1対の卵嚢を産み付けるが、両方が見つかった場合は1対、片方しか見つからなかった場合は0.5対と記録した。
 水場の整備として、元の産卵場所の付近に新たな産卵場所を6ヵ所設置した。山に整備した産卵場所は、地面に穴を掘り、ブルーシートを敷いたものとトロ舟を置いたものの2種類とした。それらの水中に卵嚢を産みつけるためのアズマネザサを入れ、水質を悪化させうる汚泥を適宜掻き出し、産卵しやすい環境に整備した。
 一時飼育として、採取した卵嚢を孵化させ、幼生をプラスチックバット内で飼育した。前肢・後肢が十分に発達した個体は、変態用の水槽に移動させ、上陸個体は山の産卵場所付近に放した。
 活動の結果、産卵数は10倍以上に増加した。活動を開始した2016年の産卵数は11対であったが、2017年に13対、2018年に15対、2019年に25対、2020年に33対、2021年に41対と緩やかに増加した。活動開始から7年が経過した2022年には産卵数117対と急激な増加が見られ、昨年2023年においても産卵数119.5対というように産卵数を維持している。2022年にみられた急激な増加は本種が性成熟までに複数年を要することと関係していると考えられ、繁殖に参加する個体が十分に増加するまで継続的に活動したことが上記のような産卵数の増加に効果的だったためだと考えられる。


日本生態学会