| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-17  (Poster presentation)

除去法によるモツゴの個体数推定【A】【O】
Estimation of the population of topmouth gudgeon in a pond using the removal method【A】【O】

*白井充大(上田染谷丘高等学校), 前嶋輝(上田染谷丘高等学校), 児玉紗希江(長野大学 淡水研), 箱山洋(長野大学 淡水研)
*Mihiro SHIRAI(Uedasomeyaoka Highschool), Akira MAEJIMA(Uedasomeyaoka Highschool), Sakie KODAMA(IFB, Nagano Univ.), Hirosi HAKOYAMA(IFB, Nagano Univ.)

生態学において動物の個体数を把握することは重要な目的の一つである。野外調査と統計分析から個体数の推定を行うことができるが、その一つに除去法(removal method)がある。ここでは、古典的な除去法の統計推論(回帰法、最尤法など)を踏まえた上で、時空間的なサンプリングを考慮した統計モデルを考え、実際に野外池のモツゴ(Pseudorasbora parva)の個体数を推定した。2023年8月に淡水生物学研究所の池(長さ50mx幅10mx深さ1m)で罠(餌入りセルビン)を用いて調査を行った。この池は水路から河川水が取水されており、野生のモツゴが侵入して繁殖している。調査時点では池は閉鎖系となっていた。調査では、池の空間構造を考慮し、長さ50mの池のふちに沿って等間隔に調査地点を4つ設定した。セルビンをそれぞれの調査地点に沈め、15分経過したらセルビンを引き上げて各地点のモツゴの採捕数を数え、隣の池に放した。これを1セットとし、計9回の調査を行った。また、9回のうち3回は4つの調査池点ごとに、無作為にそれぞれ10匹選び、全長(total length)を計測した。結果として合計で2,784匹のモツゴを捕獲することができ、累積捕獲量の増加に伴って単位努力量当たり捕獲量(CPUE)は減少した(P= 0.018)。除去法の前提である強度の捕獲圧が個体群に与えられ、モツゴが減ったと考えられる。古典的な除去法による推定では、調査開始時の池のモツゴの個体数は4,344匹(信頼区間2,471、6,216)と推定された (久野英二, 1986)。モツゴの個体サイズは、調査地点、時間の間で比較しても有意差はなかったことから、魚の質に時空間的な違いがないという除去法の前提を満たしていたと考えられる。講演ではさらに、時空間的なデータを扱う統計モデルについて検討したことも議論したい。


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