| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-21 (Poster presentation)
クビアカツヤカミキリAromia bungiiは、中国などを原産とするカミキリムシである。幼虫はサクラなどのバラ科樹木に侵入して内部を食害しフラスを排出し、食害された樹木は衰弱して最終的には枯死する。埼玉県には2013年に侵入し、被害が県北部から南部へ拡大している。
我々は、クビアカツヤカミキリの被害が深刻な行田市武蔵水路沿い桜並木にて継続調査を行ってきた。(東京都環境局,2023)によると、成虫は6月から8月に樹木から脱出し、産卵のために飛翔して被害が拡大する。また、生まれた幼虫はすぐにフラスの排出を始め、11月頃から越冬のため活動を休止し、3月頃に再びフラスの排出を始めるとされている。これまでの我々の調査で、フラスの排出が始まる時期は3月頃であると再確認し、それ以前に防除をすることで幼虫による越冬後の食害を最小限に抑えることができると考察した。更に、フラスの排出が終わる時期が分かれば、排出が終わった後に調査を行うことでその年のクビアカツヤカミキリ拡大の最前線が分かり、越冬後の食害が始まる前に防除を行えると考えた。そこで、本研究では、実際のフラス排出の終了時期を明らかにすることを目的として調査を行った。調査方法としては、調査木と定めたソメイヨシノ104本について、フラス排出の有無を目視で確認した。
調査の結果、新しいフラスが出ていた調査木が、11月と比べて12月に急激に減少していた。そのため、フラス排出の終了時期は12月であると考えられる。(所沢北高校生物部,2023)で1年間に10.5km被害が拡大するという結果が示されている。そのことから、12月頃に調査を行い被害の最前線を調べ、最前線から10.5kmの範囲を3月になる前に防除すれば、効率的に被害の拡大を防ぐことができると考える。