| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-31 (Poster presentation)
学校で破棄される落葉、雑草、板材から作成されるバイオチャーと落葉床は共に土壌改良効果を有し収量増加が見込まれ、かつ作成時にCO2を排出しない。さらに炭素隔離効果も有するバイオチャーは落葉床と比較しCO2排出の観点からより環境に良いが、これらの効果を観点別に比較している研究は少ない。そこで本研究でダイコンの成長とCO2排出の2つの観点でバイオチャーの有効性を調査した。
学校菜園を3区画に分け、バイオチャーを散布したC区、落葉床を作成したL区、未処理のN区とし、ダイコンを播種後77日間栽培した。C区とL区では等量の落葉、雑草、板材で処理した。植物は成長過程で発芽数、地高、葉緑素量、葉の枚数を、収穫時に可食部の大きさとして重量、体積、長さを、品質として直径、糖度、水分率、密度を測定した。土壌環境はpH、電気伝導度(EC)、地温、土壌含水率、微生物の指標である基質誘導呼吸量(SIR)を、CO2排出量は土壌呼吸量(SR)を測定した。
C区では発芽数が少なく、これはバイオチャーによる部分的なpHの上昇に起因すると考えられる。葉緑素量は46日目以降C区で少なく、地高がL区で低く、葉の枚数は3区画で差がなかった。これより、バイオチャーも落葉床も葉へ効果を及ぼさないことが示唆された。土壌環境は土壌含水率、pHで差がなかった。一方、全区画で適正ECを下回ったため収穫時にダイコンが細かったが、C区ではL区、N区より長く、重く、 体積が大きくなった。これは地温の高さに起因すると考えられる。品質は区画間での差はなかった。SRはC区とN区で差がなく、L区で増加した。L区ではSIRも多いことから、微生物量が増加し、落葉の分解が促進された可能性が示された。一方でC区ではCO2排出量が変化しないことが分かった。以上より、発芽後のバイオチャー散布により、収量増加とCO2排出量削減の両方が可能になると判明した。