| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-35  (Poster presentation)

ベンゾフェノンは淡水藻類の生産量を半減させる【A】
Benzophenone reduces the productivity of freshwater algae by half.【A】

*内藤醍希, 亀田麻記子(順天高等学校)
*Daiki NAITO, Makiko KAMEDA(Junten high school)

我々は農業や水産業、リクリエーションなど様々な生態系サービスを淡水から受けて生活している。この淡水に、日焼け止めの紫外線吸収剤ベンゾフェノン(以下BP)が排出され、日本の河川でも平均0.02ppmのBPが検出されている。BPはサンゴの白化の原因物質と言われているが、淡水域におけるBPの影響はほとんど調べられていない。30~1000ppm以上のごく高濃度BPは淡水魚類の生殖に影響を及ぼすことは知られているが、その他の生物、特に生態系を支える生産者への影響は分かっておらず、BPの危険性が判断できず放置されていた。そこで本研究では、淡水域生態系の生産者である淡水性藻類や陸上植物に対するBPの影響を明らかにし、また、その悪影響を低減する方法を見つけることを目的とした。
淡水域でよく見られる藻類ミドリムシを用いてBPによる影響を調べたところ、光合成速度は変化しなかったが、BP濃度が高く(1ppm以上)なるにつれ個体数は減少し、一個体あたりのクロロフィル量は増加した。低濃度BP(0.01ppm)ではクロロフィル量が減少した。結果としてBP存在下ではミドリムシ個体群全体としての生産量が大幅に減少し、夏の直射日光相当の強光下では約半減することが明らかになった。また、BPによる悪影響は、活性炭を添加することによって低減した。
陸上植物に対するBPの影響を調べたところ、光合成速度に大きな変化は見られなかったが、タマネギでは低濃度(0.1ppm)でも根や茎の伸長が大きく抑制された。一方、イネではごく低濃度(0.01ppm)BPによって根が伸長し、種によって反応性が異なること、低濃度BPでも植物の成長に影響を及ぼすことが明らかになった。
これらのことから、日本の河川で検出された低濃度BPでも、淡水域生態系に大きな影響を及ぼす可能性が示唆された。また、BP対策として活性炭が有効である可能性が示された。


日本生態学会