| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-36  (Poster presentation)

ブタナの傾性運動に影響する環境要因について
Environmental factors affecting nastic movement of Butana (Hypochaeris radicata)

*林瑞樹, 増野悠美, 奥野幹生, 垣内颯真(石川県立七尾高等学校)
*Mizuki HAYASHI, Hiromi MASUNO, Mikio OKUNO, Soma KAKIUCHI(Nanao High School)

傾性運動とは外部からの刺激を受けて植物器官が屈曲することである。傾性運動を行う植物としてオジギソウやチューリップが知られており,温度変化や照度,概日リズムが影響する。ブタナは傾性運動が起こる条件が解明されていない。その条件を明らかにすることを目的として、研究を行った。
温度の影響を見るために,温度10℃~30℃間で5℃刻み、湿度60%の条件下にしたインキュベーターに採集したブタナを10本入れ観察した。1時間ごとに撮影し、その後画像から花弁の開き具合を11段階に分けて記録した。同様に湿度の影響を見るために湿度30%~90%間で20%刻み、温度30℃の条件下で,また光の影響を見るためにインキュベーター内に明所と暗所をつくり、温度30℃の条件下で実験を行った。どの実験でも時間と環境条件のどちらの影響があるかをみるために,二元配置分散分析で解析した。その結果,温度と光,時間が傾性運動に影響しており,湿度は影響がみられなかった。
先行研究より、花の開閉の傾性運動は概日リズムによって行われ、そこに環境要因が関係し、花の開き具合が決まると知られている。今回はこれを支持する結果となった。実験結果より、傾性運動は時間の影響が大きかった。実験で使用し、夕方閉じていた個体が、次の日、昼頃に開いていることを観察しており,このことは、概日リズムの影響を強く示唆している。またブタナの花は、暖かく明るいときに長く開く傾向にあった。実験のときに花の中からアザミウマの一種がよく見つかり、これが訪花昆虫として働いている可能性がある。先行研究よりアザミウマを含む昆虫類は、暖かく明るいときに活性が高いことが知られている。今回暖かく明るいときに花が長く開いたのはこうした昆虫の送粉の行動と関係しているのかもしれない。


日本生態学会