| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-37 (Poster presentation)
2022年度の調査時に、森林公園内においてモチツツジRhododendron macrosepalが自生していることに気が付いた。モチツツジは他種のツツジ科植物と異なり、葉や茎または萼片に腺毛が密生していた。さらに、春から夏にかけて、多種の節足動物が腺毛から出る粘液により脚や翅をとられていたのが観察された。本研究では、モチツツジは腺毛に付着した節足動物を栄養源として生活する食虫植物である、と仮説を立て検証した。その際、食虫植物愛好会の示す定義に従い、食虫植物の特徴に基づいて、以下の5つの仮説を検証した。(1)昆虫を誘い出す。(2)昆虫を捕らえる。(3)捕らえた昆虫を消化する。(4)消化した栄養を吸収する。(5)植物自身の栄養に役立てる。⑴では、容器の左端にモチツツジ花茎を設置し、 容器内に10個体のキイロショウジョウバエ Drosophila melanogaster を入れ、投入から1分間隔で10分間、モチツツジ花茎上・花茎から距離ごとでキイロショウジョウバエ個体数を計測した。⑵では、静岡県立森林公園内において、モチツツジ200個体に付着していた昆虫数とモチツツジの開花数を確認した。⑶では、モチツツジの腺毛が付いた状態、腺毛を除去、腺毛のみの3つの処理を施した花茎をゼラチン上にのせて、粘液中の消化酵素の有無を確認した。⑷では、水切りしたままのモチツツジ花茎の対照処理、花茎の切り口に食紅を浸した食紅処理、花茎腺毛部分を食紅に浸した腺毛処理の3つの処理を施し、24時間後、各処理における花茎断面にみられる道管の染色具合を顕微鏡下で観察した。⑸では、森林公園内において、4つの処理区を設置し、昆虫によるモチツツジ花弁への食害率とモチツツジ花茎の生存率を比較した。本研究で検証を行った結果、仮説(2)のみ確認できたが、他4つは否定された。したがって、モチツツジは食虫植物でないことが明らかとなった。