| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-42 (Poster presentation)
プラスチックごみ並びに粒径が5mm以下の「マイクロプラスチック(MPs)」の水圏汚染によって生じ得る生態系サービスの減少および公衆衛生への悪影響は,社会の持続的な発展における地球規模の課題となっている.一方,現在のMPs分析方法は専門性の高い技術が必要であり,高校生がMPs分析を経験し,身近な社会問題として捉える上での制約の一つとなっている.本研究では,学校現場において魚類の消化管に存在するMPsを簡便に検出できる分析方法を検討・提案し,生物のMPs汚染データ集積に貢献することを目的とした.
本研究では,2023年7月9日および10月29日に霞ヶ浦で採取したアメリカナマズIctalurus punctatus(n=9)を用いた.前処理方法は既存の方法(Tanoiri et al., 2023)を参考に,学校現場における実験条件の制約を考慮して種々の変更を加えた.試料の消化管内容物を取り出して水酸化カリウム溶液(10 w/v%)で処理し,残渣を吸引濾過して材質・孔径の異なるフィルター(PTFEフィルター・10µm,濾紙・11µm,ステンレスメッシュ・72µm)上に捕集した.このとき,ピンセットでつまめる大きな残渣は別途に回収した.フィルター上の試料に蛍光色素(7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン-エタノール溶液,Cheng et al., 2023を参考)を塗布し,実体顕微鏡下で紫外線を照射しMPsを検出した.同時にMPsの画像を撮影し,画像解析ツール(ImageJ)を用いてMPsの粒径を計測した.このとき,MPsの検出方法(画像を撮影する範囲やデータの記録方法(動画または静止画))と検出量との関係を調べることで,実験の効率性と精度を評価した.
発表当日は,
① 濾過する際に使用したフィルターの種類と回収された消化管内容物の違い
② 顕微鏡下におけるMPsの検出方法と効率性や精度の違い
③ アメリカナマズにおけるMPs摂取実態
について報告する。