| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-44 (Poster presentation)
琵琶湖にはウキゴリ類が2種生息し、一つは琵琶湖固有種のイサザGymnogobius isaza 、もう一つは韓国ロシア日本にかけて分布するウキゴリ G. urotaeniaである。イサザは漁獲対象魚とし古来より様々な料理法で食されてきたが、漁獲変動が大きく何らかの保全が必要であるとされている。イサザはウキゴリから種分化したと考えられている。酒井ら(2016)は1996年7・8月の昼間に琵琶湖で底引き網を用いてウキゴリ及びイサザの稚魚を採集した。その中に中間的な形態を持つ不明種を同定し、雑種と位置付けた。この雑種は水温躍層の存在する、イサザとウキゴリの中間的湖底付近にのみ分布した。捕獲割合はイサザ93%、ウキゴリ3.9%、雑種3.1%であった。この雑種と思われる不明種については遺伝子解析はまだ行われていない。成魚については形態的観察から雑種の報告はされているおり、中間的な形質を持つ個体を雑種として写真を載せている魚類図鑑もあるが、生息率の推定や、遺伝子解析はいまだなされていない。私たちは両種の核DNAを用いたRFLP法によるF1雑種の判別方法を開発し、成魚のイサザおよびウキゴリを形態的および遺伝子的に解析し、雑種の存在を確認し、生息割合を求め、さらにミトコンドリアDNAを用いて母系を推定することにより、両種の生存戦略解明しイサザの保全につなげることを目的とした。形態観察・形態計測からイサザ(94個体)とウキゴリ(28個体)を同定したが、中間的な形質を持つ雑種は観察されなかった。遺伝子解析からイサザ(91個体)とウキゴリ(26個体)は同定されたが、F1雑種は判別されなかった。形態観察・形態計測と遺伝子解析結果が矛盾するサンプルはなかった。先行研究で示された、稚魚の約3%存在した雑種が、成魚になることは難しい可能性が示された。