| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-53  (Poster presentation)

カラスと仲良くしたいんです 〜機械学習と被害の軽減〜
Crows, will you be my friend?: stop feeding damage with machine learning

*長澤花奈, 土屋柊人(浜松学芸高校)
*Kana NAGASAWA, Syuto TSUCHIYA(Hamamatsu Gakugei High School)

現在、カラス類による農作物被害は、被害面積1.6千ha、被害量13.2千トン、被害金額13億円にも達し、鳥類のなかでは最大である。鳥害対策は音、光、形態などの特徴を用いて鳥を脅かして追い払う機器が数多く考案されているが、効果が長持ちしないなどの問題点がある。したがって、カラス以外のものに機械が反応せず必要最低限の動作で効果を上げることが重要である。本研究では、カラスの電子音に対する馴化と脱馴化に着目して、農作物被害の低減と追い払い効果検証を目指す。ラズベリーパイを利用した装置の動作検証をハシブトガラス・ハシボソガラス・キジバトの3種の剥製を用いて行った。剥製の位置を原点としてxy座標軸をとり、各位置において、装置が正常に作動するかを確認した。次に、剥製と装置のあいだの距離を2mに固定し、カラスの剥製を回転させ、各角度において装置の反応を確認した。その結果、135cm~300cmで画角が約60度以内の範囲であれば、高確率でハシブトガラスを検知できることが示された。また、全方位からの反応では、剥製の嘴がシルエットとして認識できる角度では高精度で検知できた。次に馴化-脱馴化実験では、浜松市浜名区小松地区の家庭菜園および浜名区都田地区の畑の2地点で行った。全12週間の期間で1週間ごとに次の3つの処理を交替した。対照処理、カラスの忌避する音のみの忌避音処理、20種類の音をランダムに流すランダム処理である。3つの処理区間で装置とカメラの撮影頻度を比較することで評価した。小松地区では全12週をとおして一度もカラスは撮影されなかった。一方都田地区では幾度かカラスが撮影され、対象処理において、もっとも撮影頻度が高く、また滞在時間も長かった。カラスの検知、追い払い効果は確認できたが、誤検知、未検知が多い。今後とも継続的に実験を行うことで高精度な検証を目指し、より安定してカラスを検出するためにさらにプログラミングの修正、改善を行っていきたい。


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