| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-54  (Poster presentation)

ニホンリスの生息調査 ~岡山県高梁市における森のエビフライ屋の実態~【A】
Ecological survey of Japanese squirrel in Takahashi city, Okayama prefecture【A】

*石井仁菜, 藤川京香, 松田梨里(清心女子高等学校)
*Nina ISHII, Miko FUJIKAWA, Riri MATSUDA(Seishin Girls' High School)

 ニホンリスSciurus lis(ネズミ目リス科)は日本固有種であり、中国地方のニホンリスは絶滅のおそれのある地域個体群(LP)に指定されている。岡山県では県南東部、北西部、および北東部では目撃例や食痕が認められ、生息が確認されたが、高梁市より西部の生息は稀とされている。私たちは、高梁美しい森を調査地として、生息実態を明らかにするために調査を行うことにした。
 調査は、2022年4月から約2か月ごとに、調査地内に設定した5つの地点で、二ホンリスが食べたアカマツの球果の食痕(別名:エビフライ)を探した。落ちていた食痕はすべて回数して計測し、食べられずに残っている球果と大きさの比較を行った。また、食痕が落ちている地点のアカマツの本数など環境を調べ、赤外線センサーカメラを設置し、行動を記録した。
 食痕数については、5地点全体で春から夏にかけて多くなり、秋以降は少なくなった。食痕の大きさは、食べられずに残っている球果よりも小さめだった。食痕はアカマツの本数が多い地点でより多く見つかった。センサーカメラの映像は日中しか撮影されておらず、85%が午前中だった。また撮影時期は2月から4月に多くなった。
 今後、球果に含まれる種子量などを調査し、選好性を明らかにしていきたい。また、食痕密度は先行研究と比較すると非常に多かったことから、複数個体が生息している可能性がある。今後、オスの行動圏を考えると、調査地はほんの一部に過ぎないため、調査エリアを広げて食痕数の変化などを調べていく必要がある。生息数が少ない県西部での生息実態をより正確に把握することで、本種の保全活動に貢献していきたい。


日本生態学会