| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-57  (Poster presentation)

都市公園におけるヒキガエルの生態と保全【A】
Ecological Research and Conservation of Urban Toad【A】

*城陽太, 錦織智崇, 高久曜充, 矢城翔宇, 守田倫生, 鞠子禅, 佐藤暖哲(東京都立科学技術高校)
*Haruta JO, Chishu NISHIGORI, Hikaru TAKAHISA, Sho YASHIRO, Rinsei MORITA, Zen MARIKO, Haruaki SATO(Tokyo H. S. of Sci. and Tech.)

両生類は、生育に水辺環境が必須であるが、近年の開発に伴い全国的に多くの種が絶滅の危機に晒されている。その中で、本校(東京都江東区)の近くに位置する猿江恩賜公園は小規模の都市公園で、かつ外来種も多く、良好とは言い難い環境にもかかわらず絶滅危惧種のヒキガエルが非常に多く見られることに気付いた。そこで私達は、「個体識別調査」を行うことで、公園内のヒキガエルの生態を解明しようと考えた。従来の個体識別には「指切り法」があるが、個体への影響や倫理的な問題が報告されている。そこで本研究では、ヒキガエルの腹部の特徴的な「色彩パターン」を照合することで個体識別を行った。調査の結果、当初の予想を大きく上回る個体数や、繁殖期と非繁殖期の移動性に違いについて確認することができた。さらに、亜種の推定も行った。本州の平地には、主に東日本にアズマヒキガエル、西日本にニホンヒキガエルが分布している。分布域から考えて、この公園にはアズマヒキガエルが生息していると予想していたが、外見的特徴(鼓膜径)とミトコンドリアDNAを調べた結果、在来のアズマヒキガエルよりも移入種のニホンヒキガエル及び両種の交雑種と考えられる個体が多く生息していることや、交雑によって外見的特徴に影響を及ぼしていることを示す結果が得られ、公園内のヒキガエルの遺伝的多様性・地域性が失われつつある可能性が示唆された。また、機械学習の一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用した、「リーグ戦方式」という独自の分類システムを用いた、腹部の画像による個体識別の検討も行った。結果、「リーグ戦方式」により、画像の判別を効率化することができた。本研究によって、ヒキガエルの色彩パターンを用いた非侵襲的な個体識別の可能性、公園内のヒキガエルの個体数や行動、在来種と移入種の交雑とその影響など、都市部のヒキガエルの保全の基盤となるデータを得ることができた。


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