| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-61 (Poster presentation)
近年、交通騒音が野生動物の移動分散や生態に悪影響を与えている可能性が注目を浴びている。カエル類は住宅地に隣接した田圃や池沼に多く生息し、繁殖の際、鳴き声によって雄が雌を誘引することや、多くの種が夜行性であり、夜間に繁殖を行うことから、都市の騒音や光の影響を受けやすい生物であると考えられる。本研究では、ニホンアマガエルを対象として自動車による音、光、振動がカエル雄の繁殖活動におよぼす影響を明らかにすることを目的とし、野外調査と室内実験を行った。野外調査では、ルートセンサス調査を行い、田圃におけるカエルの生息数と畔の形状、自動車の交通量について注目した。生息数調査には騒音計を用いた。また、調査ルート内にある畔の形状を、草本のある緩やかな畔と水路のある垂直な畔に分け、その付近で発見した轢死体数を記録し、1mあたりの轢死体数を求めた。室内実験ではプラスチック製の容器を用いて、自動車の音、光、振動がカエルに与える影響を明らかにした。それぞれ自動車の走行音を録音、LEDライト、振動モーターで容器内のカエルに刺激を与えた。加えて調査ルート内の轢死体があまり見られなかった場所において、追加でルートセンサス調査を行い、朝と夕方の轢死体数を比較した。調査より、轢死体数はカエルの生息数、畔の形状と関係があることが明らかになった。一方で、自動車の交通量との関係は示されなかった。3つの実験ではアマガエルが車の音や光、振動に対し活動性を低下させることが示された。さらに、調査ルートにおいて日中に鳥類によるカエルの死体採食が行われている可能性が示唆された。結果として、自動車による騒音や振動およびライトが、カエルの繁殖活動におよぼす影響を明らかにすることはできなかったが、道路上にカエル死体が多く確認できたことから、自動車による交通事故の影響は決して無視できないことが明らかになった。