| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-62  (Poster presentation)

レンコン害獣爆誕 〜トレイルカメラを用いた食害被害の定量化〜
Birth of lotus roots eater: qualification of feeding damage using trail cameras

*伊勢惟人, 長澤花奈, 北島知果, 河合陽祐(浜松学芸高校)
*Yuito ISE, Kana NAGASAWA, Tomoka KITAJIMA, Yousuke KAWAI(Hamamatsu Gakugei High School)

浜松市中央区神ヶ谷地区のレンコン農家では、毎年冬になるとカモ類やヌートリアなどの害獣による食害に悩まされている。被害状況は大変深刻であり、半分以上の種レンコンが食害される年もある。しかし、害獣に対して対策をとりたくても、この地域でどのような生きものがどの時間帯にどのようにしてレンコンを採食しているのか詳しいことは解明されていない。そのため、本研究は、神ヶ谷地区におけるレンコン食害の実態を解明することを主な目的とする。過去2年間の野鳥調査では、2週間に1回の頻度で蓮田(レンコン畑)を踏査し、蓮田を利用する野鳥の種名と個体数を記録することで、多くのカモ類が蓮田を選好していることが明らかになった。そこで、本研究ではレンコン農家の承諾を受けた上で、調査していた蓮田のうち3地点に赤外線センサカメラを各1台ずつ設置し、24時間にわたりどのような生きものがレンコンを食害しているか記録した。また、同時期に蓮田全体のなかで水面が占める割合を算出した。1地点目と2地点目は蓮田内部全体を、3地点目は蓮田畔の上に収穫後放置されたレンコンの茎や根に集まるを生きものが記録できるように蓮田畔の支柱に括り付けて赤外線センサカメラを設置した。カメラは2週間に1回、回収し、確認された動物種と時間、個体数および行動を記録した。約2か月間の調査ではカモ類のカルガモやマガモ、コガモに加えて特定外来生物ヌートリアが主に夜間にレンコンを採食していた。特に、レンコンの根や茎が積み上げられた地点では、毎日のようにヌートリアがレンコンを採食していた。本研究から、鳥類に対しては蓮田の水を抜くことで訪問個体数を激減させることができる可能性が示された。また、蓮田畔にレンコンの根や茎を投棄することで、多くのレンコン害獣を誘引するだけでなく、寒さに弱いヌートリアの越冬を助ける一因にもなっているのではないだろうか。


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