| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-63 (Poster presentation)
ニハイチュウは、底生頭足類の腎嚢に片利共生する体長数mmの多細胞動物で、尿とともに海中に排出されないように頭部(極帽)で腎嚢表面に接着している。昨年の研究で、ニハイチュウの極帽は幼生ではすべて同じ円錐形であり、極帽が円錐形の種は腎嚢の窪みにのみ接着して成長しても円錐形を維持するが、極帽が円盤形の種は平坦な場所にのみ接着して、成長の過程で極帽の形を円盤形に変形させることを明らかにした。本年は、なぜ円盤形のニハイチュウは窪みに入らないのかを明らかにしようと考えた。
合計296個体のニハイチュウの極帽の大きさを測定したところ、腎嚢の窪みは極帽に対して十分に大きかった。また、20℃における極帽が円錐形のニハイチュウと円盤形のニハイチュウ合計106個体の遊泳力を測定したが有意差はなく、円錐形が高い遊泳力で接着に適している窪みを優先的に奪っているとも考えにくい。底生頭足類の腎嚢は尿細管の付近にあり、円錐形のニハイチュウは尿に何らかの反応を示している可能性がある。