| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
シンポジウム S18-1 (Presentation in Symposium)
生態学や農林分野で使用されている無人航空機(UAV)を用いた研究事例の多くが、森林上空からデータを取得している。本研究では森林内を飛行するドローンを開発するとともに、森林内を飛行するドローンで新たに取得できる森林内空間(空隙)に注目し、空隙という視点による空間の機能や意義、生態学へのアプローチを紹介する。空隙はvoid(未定義空間)と呼ばれ、森林内構造物以外の空間である。コリドーとして動物の移動場所であり、パッチとして下層植物の生息地であり、次世代の森林を形成する実生が成長する重要な場所である。しかし、その空間自体を定量化した事例はこれまでにない。本研究ではレーザーによる3次元データを用いて、空隙を定量化するとともに、その構成と意義について検討した。森林内を飛行するドローン開発にはGPSに依存しない飛行誘導技術の確立、取得するデータへの正確な位置情報の提供など様々な困難が伴う。こうした課題を工学部の研究者と分野横断で克服しながら、より安定した飛行やデータ取得を目指す開発が続けられている。また、空隙データの活用も他分野との融合が期待できる。現在、地形学の研究者と共同で、森林上空から取得されるデータだけではわからない地すべりによる森林内樹木の傾きを解明している。ドローンの使用は、広域を容易に取得できる便利な「ツール」としてだけでなく、これまで計測できなかった分野を開拓できる可能性が高い。科学とアートという異分野の融合が欧米では先行しているが、フィールドワークを主体とする生態学の分野で、ドローンなどの新技術を単なる計測の「ツール」として用いるだけではなく、「新たな表現方法」として使用できれば、新たな視点が見出せるかもしれない。