| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S18-5  (Presentation in Symposium)

リモートセンシングによる尾瀬ヶ原湿原のシカの個体数推定手法の開発【O】
Development of Methods for Estimating Deer Population Size with Ground and Remote Sensing Techniques【O】

*沖一雄(京都先端科学大学, 東京大学), 牧雅康(福島大学), 奥村忠誠(野生動物保護管理), 大西勝博(野生動物保護管理), サレムイブラヒム サレム(京都先端科学大学), 白山栄(京都先端科学大学)
*Kazuo OKI(KUAS, Tokyo Univ.), Masayasu MAKI(Fukushima Univ), Tadanobu OKUMURA(WMO), Masahiro ONISHI(WMO), Salem Ibrahim SALEM(KUAS), Sakae SHIRAYAMA(KUAS)

尾瀬ヶ原は貴重な植物群落が生育していることから平成17年にはラムサール条約登録湿地に登録されている。また、5~7月の湿原植物の開花時期をピークに年間30~40万人の観光客が訪れるなど、人々に幅広くその自然環境・植生の価値が認められている。一方で、1990年代半ばからシカが確認されるようになり、自然植生へのシカによる影響が顕在化し生態系への不可逆的な影響が懸念されている。
これまで尾瀬ヶ原のシカの生息数に関する指標として、主にはライトセンサス調査による目撃数の変化が使われてきた。しかし、ライトセンサス調査はその日の気象条件やシカの動きに強く影響を受けるため、データの観測誤差が大きくなる問題がある。その他、シカの生息密度の指標として、自動撮影カメラの撮影頻度とGPS首輪から得られた移動速度を元に推定する手法があるが労力がかかる。また、糞塊調査、糞粒調査、区画法などもあるが、これらの手法は尾根や山の中を歩き回りシカやその痕跡を探すという手法であり、人による踏査が難しい湿地帯である尾瀬のような湿原には適さない。
現在、尾瀬の湿原内外において、シカの捕獲が実施されているが、尾瀬の植生被害を低減させるために必要な捕獲数は設定されずに捕獲が行われている。このことから、尾瀬のような人のアプローチが難しい場所で行える密度調査手法が求められている。
ここでは、これらの問題を解決するために、日本最大の山岳湿原として知られている尾瀬ヶ原湿原において、いままでに著者らによって開発されたドローンリモートセンシングとマイクロフォン地上センサによる尾瀬ヶ原西部地域におけるシカ個体数の推定を試みた結果について報告する。具体的には、(1)ドローンリモートセンシングによるシカ個体数の推定とライトセンサスとの比較, (2)複数マイクロフォンによるシカの行動範囲計測手法の開発と個体数の推定,について発表する。


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