| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
シンポジウム S18-6 (Presentation in Symposium)
リモートセンシングによる森林の地上部バイオマス(AGB)の空間分布情報は、森林の炭素蓄積量や生産性に資する生態系サービスの評価など、環境科学、生態学的評価指標の情報源として重要な意味を持つ。無人ドローン搭載型のレーザースキャナ(UAV-LiDAR)は、従来の航空機や人工衛星よりも高い空間分解能をもち、比較的低コストでの運用も可能であることから、近年、その利用が活発化している。一方、地上での毎木調査データから算出されるAGBは、リモートセンシングによる空間情報をAGBに変換する際のモデル作成と精度検証に不可欠である。毎木調査の観測面積は比較するリモートセンシングデータの空間分解能をカバーするのが望ましい。しかし、多くの衛星の撮影画素の投影面積は、従来の地上調査プロットより大きいため、有効な地点数や多様な検証地点の確保は容易ではなく、予測精度の向上や品質維持にとって大きな課題である。本研究では、高空間分解能の観測が可能なUAV-LiDARを利用することで、森林AGBの広域マッピングにおいて、これまで地点数はあるものの真値として扱いづらかった小面積の毎木調査データの活用を試みた。北海道大学苫小牧研究林(落葉広葉樹二次林と針葉樹造林地、面積約2,700ha)を対象に、2022年夏にUAV-LiDARを用いて空間分解0.1mの三次元構造を全域で撮影した。大学が所有する147箇所の毎木調査データ(面積0.06-1.15 ha、平均0.20ha)のAGBを真値として予測モデルを作成し、AGBレンジ 61~293t/haに対して、相対誤差rRMSE19%のマップを作製した。検証地点数の増加は予測モデルに対する森林の特徴(着葉タイプや立木密度)や地形などの効果の検証を可能にし、本研究では植生高のほかに森林タイプと立木密度が有意な説明要因であることが示された。本講演では、今後の研究の発展として、AGBの時空間変化の解析や、大きな空間情報を必要とする人工衛星検証におけるUAV-LiDARの活用についても紹介する。※本研究はJAXA-EORA3の助成を受けた。