| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


自由集会 W08-3  (Workshop)

王・女王の繁殖を全力支援するシロアリの社会システム
Social systems that support reproduction of kings and queens in termites

*高田守(京都大・農), 小西堯生(京都大・農), WUYao(京都大・農), 野崎友成(基生研進化ゲノミクス), 田﨑英祐(新潟大・理), 松浦健二(京都大・農)
*Mamoru TAKATA(Kyoto Univ.), Takao KONISHI(Kyoto Univ.), Yao WU(Kyoto Univ.), Tomonari NOZAKI(NIBB), Eisuke TASAKI(Niigata Univ.), Kenji MATSUURA(Kyoto Univ.)

社会性昆虫は繁殖に特化した王・女王と、それ以外の労働を担うワーカーの間での繁殖分業が特徴である。この分業により、多くの社会性昆虫の王・女王は数十年もの寿命を持ち、その生涯で数十万匹の子を生産する。このような単独性の生物では考えられない高い繁殖能力と長寿の両立は、どのような社会システムによって実現されているのだろうか。本講演では、ヤマトシロアリを例に、王・女王を外的死亡リスクから守る仕組みや、王・女王に資源を集中させるシステムについて紹介する。シロアリは熱帯から亜熱帯にかけての温暖な地域にほとんどの種が分布し、王や女王は強固な壁を持つ王室の中で外敵から守られながら繁殖に専念する。ヤマトシロアリはシロアリの中では例外的に寒冷な地域に分布するため、王・女王を数十年間生き長らえさせる上では、致死的な低温からの保護が不可欠である。発表者らは膨大な労力と時間をかけた野外調査により、本種の王と女王が、温暖な季節には地上の営巣材に存在する王室で繁殖をおこなうが、寒冷な季節にはこの王室を放棄して、別途用意された秘密の地下王室に移動することを突き止めた。この地下王室への移動が越冬中の王と女王の死亡リスクに及ぼす効果について、王と女王の低温耐性、過去の外気温の記録、地中熱をもとに考察する。次に、温暖な季節に王と女王に繁殖資源を集中させる生理的メカニズムについて紹介する。王と女王の高い繁殖能力は、ワーカーが集めた繁殖資源が彼らのもとへ集中することによって実現される。なぜ繁殖資源はコロニーの大半を占めるワーカー達に使われることなく、王・女王に集まるのだろうか。発表者らは繁殖に不可欠な窒素源となる尿酸に着目することで、王と女王のみが尿酸の利用に必要な尿酸分解酵素の遺伝子を発現しており、繁殖資源を独占的に利用できることを発見した。これらの結果を踏まえ、王と女王の繁殖を支える社会システムについて考察する。


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