| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(口頭発表) C01-01 (Oral presentation)
北海道の人口は1995年から減少に転じ、産業構造の変化なども伴って、農地の荒廃化が進み、大きな社会問題になっている。しかし、北海道は地域によって農業形態(稲作、畑作、酪農)や人口密度が大きく異なるために、荒廃農地の発生状況も地域ごとに評価する必要がある。そこで、本研究では、公開されている100 mメッシュの土地利用データ(国土数値情報土地利用細分メッシュ)を用いて、北海道の釧路・根室地方(以下、酪農地帯)と十勝・オホーツク地方(以下、畑作地帯)における荒廃農地の発生状況を比較した。荒廃農地を、農地から森林や荒地に変化したメッシュと定義して、1997年から2006年(以下、前期)と、2006年から2016年(以下、後期)の2期間について発生した荒廃農地を抽出した。荒廃農地の発生面積は、酪農地帯と畑作地帯の両方において近年増加傾向にあることが分かった(酪農地帯:前期15,325 ha、後期25,613 ha、畑作地帯:前期32,389 ha、後期40,288 ha)。発生した荒廃農地の標高は、畑作地帯では、前期187±120 m(平均値±標準偏差)、後期150±110 mであり、近年では低標高の農地で荒廃が進んでいた(Mann-WhitneyのU検定,p < 0.01)。酪農地帯においては、前期71±57 m、後期69±56 mであり、差はわずかであった(p < 0.05)。また、荒廃農地が多く発生している10 kmメッシュ内の土地利用を比較したところ、畑作地帯と酪農地帯の両方で、荒廃農地の多い地域は前期では周囲に農地や宅地の少ない景観であったが、後期では農地や宅地が多い景観に移ってきている傾向があり、農地の荒廃化は、耕作地として条件の悪かった場所から条件の良い場所に広がっている傾向が明らかになった。以上のように、公開データベースを用いることで、地域や年代ごとの荒廃農地の発生状況を把握することができた。